2016年度第67回大会 若手企画部会の開催について

だれが・なんのために〈調査〉するのか? (1日目午後)

趣旨

近年,世界的にも再評価の著しいオペライズモ研究が明らかにしてきたように,戦後イタリアの社会運動は,調査実践そのものをいわば自己組織化の方法論としてきた。’80年代「鉛の時代」前後の同時代的連帯以降,ネグリ(構成的権力)をはじめ,ヴィルノ(マルチチュードの文法),ベラルディ(プレカリアートの詩),メッザードラ(逃走の権利),ラッツァラート(借金人間製造工場)などの日本語訳が多数刊行されてきたにもかかわらず,その方法論についてよく理解されてきたとはいいがたい。
コンリチェルカ(共同調査)という着想がどこからきたのかを問うなら,戦時下のデトロイトに生まれたジョンソン=フォレスト派のマルクス再発見がフランスの「社会主義か野蛮か」を経由してイタリアに影響を及ぼした,ある数奇な思想的系譜をたどりなおすことになる。ならば,その理論と実践と(あるいは失敗と,それにもかかわらずの大きな思想的インパクト)は,たとえば「社会に資する」調査のあり方を考えるとき,なにを示唆するだろうか。あるいは「プレカリテの時代」ともいわれるように諸条件の不安定化する現代社会において,わたしたちはどのような方法をとりうるだろうか?
ここでは調査の「非対称性」をしばらく忘れて「素人」から学び,「だれが・なんのために〈調査〉するのか」を,根本にたちかえって考えなおす機会としたい。

コーディネーター  櫻田和也 大阪市立大学

報告者

持木良太

「沖縄の近代化論争史にみる方法論上の問題」

原口剛

「釜ヶ崎と山谷:寄せ場における〈労働者調査〉」

板倉善之+佐藤零郎

「映像には夜の暗闇を記録できるか

マニュエル・ヤン

「From The American Worker to Zerowork」

(研究活動委員 森下伸也)