2017年度第68回大会シンポジウムについて

次回第68回大会では、以下に紹介する二つのシンポジウムの開催が予定されています。シンポジウム1「歴史経験の語られ方,記憶のされ方」、シンポジウム2「社会学と障害学の対話」の順に、詳細を掲載します。
(2017年5月6日追記:この記事の投稿後、シンポジウム2の第一報告タイトルが変更されました。詳細については、このページをスクロールして末尾をご確認下さい。)

 

シンポジウム1「歴史経験の語られ方,記憶のされ方」

趣旨

 本シンポジウムは、歴史経験がどのように語られ(あるいは語られず)、記憶され(忘却され)ていくのかを論じるものである。この「記憶の政治」に関する研究は、記憶論に代表されるように90年代以降の人文・社会科学にとって主要な問題系のひとつであり、社会学においてもライフストリー論や記憶論で多くの蓄積がなされてきたし、さらに近年新たな展開を見せている。そこで、ここでは三人の個性的な研究を手がかりとして、社会学的「記憶の政治」研究の新たな可能性を探っていきたい。

 まず、1948年に生起した韓国済州島の4・3事件をめぐる語りに関する伊地知紀子さんの研究である。済州4・3は、語り手だけでなく家族や親戚姻戚が事件をどのように経験し、事件後をどこでどのように経験したかで規定される。このような歴史的事件を生きてきた人びとが何をどのように語るのかを生活史から明らかにする。

 ついで、東日本大震災での突然の死という不条理を人びとが語り記憶していくことと東日本大震災史との間にある齟齬を考察する金菱清さんの研究である。亡き息子と一緒に書いた記録や「私は死んだんですか」という霊の問いかけなど、東日本大震災で残された記録たちは、いずれも死を経ても宿る魂の存在を前提としている。このような不正確な記憶は史実から退けられてきたが、金菱さんはこの一見前近代的で非合理的と思われかねない「死を経ても宿る魂」への人びとの共感から、歪められるべき記憶という問題を問う。

 最後に、負の遺産を記憶することの(不)可能性について九州の三池炭鉱をめぐる集合的な表象と実践を通しての松浦雄介さんの研究である。「負の遺産」という言葉は、文化遺産の文脈ではおおよそ、ある社会にもたらされた重大な人為的惨禍を伝えるものという意味で用いられるが、社会はこの「負の遺産」をどのように記憶する/しないのかを持ち前の記憶論から鋭く描き出す。

 このように、三報告はそれぞれ独特なアプローチをするが、本シンポジウムはそれらを手がかりに歴史経験の語られ方、記憶のされ方に関する社会学的可能性を問う。

 

登壇者および報告タイトル

  1. 済州4・3を語る、済州4・3から語る 伊地知紀子(大阪市立大学)
  2. 死を経て宿る「魂」の記録―東日本大震災における歪められるべき記憶 金菱清(東北学院大学)
  3. 負の遺産を記憶することの(不)可能性 松浦雄介(熊本大学)

 

コメンテーター

  • 坂部晶子(名古屋大学)
  • 荻野昌弘(関西学院大学)

司会

  • 蘭信三(上智大学)
  • 今井信雄(関西学院大学)

 

シンポジウム2「社会学と障害学の対話」

趣旨

 障害学(Disability Studies)は当事者学として社会科学の中に確固としたポジションを確立したように見える。例えばアメリカ障害学の理論形成において、社会学者であるアーウィン・ゾラの専門家批判の議論が大きな役割を果たしており、社会学の障害学に対する貢献は顕著である。ところが障害学の社会学に対する影響という観点から見れば、障害学と関係の深い家族、医療、そして教育の各領域と対応した医療社会学、家族社会学、そして教育社会学において、障害学が浸透しているとは言いがたい。そこで、障害学が近年切り拓いてきた知見と社会学との対話の場を意図的に設定することによって、ヒューリスティックな知見がもたらされると考えられる。

 このシンポジウムでは、医療、家族、そして教育の各領域において、障害学の知見を取り入れながら、優れた社会学的研究を産出してきた3名の研究者に登壇していただき、特にインペアメントとディスアビリティという2つの概念をめぐって、具体的な研究例に基づいて批判的な議論を積み上げることによって、障害学が社会学に、同時に、社会学が障害学に貢献できることの輪郭を描くことを目標とする。

 

登壇者および報告タイトル

  1. 「軽度障害」概念を通した、インペアメントのディスアビリティ概念への包摂 秋風千惠(大阪市立大学)
  2. 障害児教育の社会学的分析におけるディスアビリティ概念の位置と機能 佐藤貴宣(日本学術振興会)
  3. ディスアビリティとインペアメント−精神障害・発達障害の困難経験からの検討― 浦野茂(三重県立看護大学)

 

コメンテーター

  • 西倉実季(和歌山大学)

司会

  • 山田富秋(松山大学)

 

(シンポジウム1 研究活動担当理事 蘭信三)
(シンポジウム2 研究活動担当理事 山田富秋)

2017年5月6日追記:シンポジウム2の第一報告タイトルが変更されました。「家族社会学におけるジェンダーとディスアビリティの複合性」(変更前)から「『軽度障害』概念を通した、インペアメントのディスアビリティ概念への包摂」(変更後)となっています。