2020年度第71回大会シンポジウムについて

シンポジウム 「2010年代の政治と権力――何が破壊され,何が生まれたのか?」

趣旨

現代の「政治」はどこに向かおうとしているのか。この社会の「権力」はいかなる変容を経験しつつあるのか。そして,私たちの「民主主義」はどうなるのだろうか。今期研究活動委員会は初年度となる2020年大会で,こうしたアクチュアルな問いに接近するシンポジウム「2010年代の政治と権力――何が破壊され,何が生まれたのか?」を開催します。

2009年の民主党政権誕生以降のこの10年を振り返ると,2011年の東日本大震災,2012年の第2次安倍内閣発足を経て,日本社会の政治と権力のあり方に大きな変質が見られることは間違いありません。それは,トランプ現象やブレクジットのような世界的な情勢,東アジアにおける多国間関係などと相互に関連していますし,私たちが生活する身近な組織や人間関係における「権力」の形態にも深い影響を与えているように思います。2010年代に何がどう破壊され,何が新しく生まれたのか。あるいは,壊されるべきものが死守され,生まれようとしているものが押し殺されているのではないか。

このシンポジウムでは,現代の政治と権力をめぐって多様な観点からの報告をいただき,フロアを交えて自由に議論していきたいと思います。報告者は,『忖度と官僚制の政治学』(青土社,2018年)を上梓された野口雅弘さん(成蹊大学),『歴史修正主義とサブカルチャー――90年代保守言説のメディア文化』(青弓社,2018年)の著者である倉橋耕平さん(立命館大学),「「都心回帰」と都市政治――大阪市政の「維新」ブームをめぐって」(鯵坂学他編『さまよえる大都市・大阪』(東信堂,2019年)所収)を執筆された丸山真央さん(滋賀県立大学),安保関連法案に反対するママの会発起人でデューイの「生き方としての民主主義」を研究されている西郷南海子さん(京都大学大学院),の4名です。

司会は,研究活動委員の奥村隆(関西学院大学),鯵坂学(同志社大学)が担当します。多くのご参加をいただいて,社会学がこの問いにどう向き合うことができるのかを議論できればと考えています。

 報告者および報告タイトル

  • 野口雅弘(成蹊大学)
    「鉄の檻」から「脆弱な殻」へ
    ―リベラルが官僚制を擁護するという状況とそこにおける権力について―
  • 倉橋耕平(立命館大学)
    2010年代の政治をめぐる言説空間
    ―イデオロギーの変容と政治コミュニケーション―
  • 丸山真央(滋賀県立大学)
    大都市の草の根保守は変わったのか
    ―「維新」の都市政治社会学―
  • 西郷南海子(京都大学大学院)
    2010年代の市民運動を振り返って
    ―「実感」から出発する政治参加とデモクラシー―

司会

  • 奥村隆(関西学院大学)
  • 鯵坂学(同志社大学)

(研究活動理事 奥村隆)