2022年度第73回大会シンポジウム「ケアから社会を構想する――ポストコロナの社会理論」について

シンポジウム「ケアから社会を構想する――ポストコロナの社会理論」

 趣旨

今期(2019年~2022年)の研究活動委員会は,〈社会学のルーツと境界を探り,アクチュアリティを問う〉をコンセプトに,さまざまな可能性を追求しています。

2020年度第71回大会は,現代の政治をアクチュアルに問うシンポジウム「2010年代の政治と権力――何が破壊され,何が生まれたのか?」,2021年度第72回大会は,中等教育と大学教育の「あいだ」で,社会学教育の可能性を問うシンポジウム「社会学を高校生にも――〈市民〉を育てる実践」を開催しました。

第73回大会は,招待講演に続いてシンポジウムを開催します。招待講演のテーマは,「ケア/ジェンダー/民主主義」,シンポジウムのテーマは「ケアから社会を構想する」です。一連の講演・報告・討議では,コロナ禍で露呈したケアをめぐる社会問題に焦点を当て,ケアという視点からコロナ後の社会および社会理論を構想します。

シンポジウムでは,はじめに,落合恵美子(京都大学)が,全体の趣旨を説明し,自宅療養者とその家族を対象として実施した最新の調査研究をふまえて,ケアを可視化し、評価し、実践するためのフェミニスト社会科学からの提案に依拠しながら、生とケアを包摂する社会を構想するためのビジョンを示します(第1報告)。

第2報告は,イト・ペングさん(トロント大学)です。イト・ペングさんは,比較政策学,福祉国家論が専門。現在はケアエコノミーに関する国際プロジェクトCare Economies in Context: towards sustainable social and economic developmentを率いておられるフェミニスト社会科学のリーダー的存在です。報告では,ケアを社会理論に包摂するための分野横断的な試みとその成果についてお話いただく予定です。時差の関係で、イト・ペングさんの報告は録画ビデオによる発表となります。

第3報告は,山田陽子さん(大阪大学)です。山田陽子さんは,自殺やハラスメント,感情労働や感情資本主義について質的調査や社会学理論を通して研究されています。報告では,コロナ禍の自殺と自殺予防を事例として,ケアの労働化と専門職化,市場化が進行し,ケアする者のケアも問題となる現在,ケアに満ちた社会とは何を意味しているのかについて分析していただきます。

第4報告は,千種キムラ・スティーブンさん(早稲田大学ジェンダー研究所)です。千種キムラ・スティーブンさんはニュージーランド在住の日本文学研究者です。このたび『新型コロナ<感染ゼロ>戦略,ニュージーランド』(作品社,2021年)を上梓されましたので,アーダーン政権のコロナ対策成功の理由をコロニアリズムの問題とも関連づけて論じていただく予定です。

討論者は,招待講演を担当いただく岡野八代さん(同志社大学)に依頼しました。司会は,研究活動委員長の岡崎宏樹(神戸学院大学)が担当します。

報告者および報告タイトル

1.落合恵美子(京都大学)
Caring Society――生を包摂する社会と社会科学

2.イト・ペング(トロント大学)
Care as an Intersectional Lens to Analyze Socio-Economy

3.山田陽子(大阪大学)
「死にたさ」とともに生きる――コロナ禍の自殺とケア

4.千種キムラ・スティーブン(早稲田大学ジェンダー研究所)
ニュージーランドにおけるパンデミックと福祉政策

討論者 岡野八代(同志社大学)

司会 岡崎宏樹(神戸学院大学)

(研究活動理事 落合恵美子・石原俊)

*諸事情によりニュースレター等でご案内した企画案と報告者・司会者を一部変更して開催します。