2018年度第69回大会若手企画部会について

次回第69回大会では、以下に紹介するテーマで、若手企画部会の開催が予定されています。

 

テーマ「〈語り〉に着目した調査研究の課題を考える――〈病いの語り〉研究の検討を中心に」

趣旨

社会学では、調査対象者の〈語り〉、すなわち、何らかの物語性をもって述懐されるところのものや、述懐するというその行為は、いわゆる質的調査において重要な位置を占めてきた。本部会の企画者らが専攻する医療社会学においても、〈病いの語り〉研究として緩やかに括られる多くの研究が存在する。個人の経験の軌跡を分析単位とするこの視点は、医療社会学ひいては社会学一般に対して多大な貢献をしてきた。しかし一方で、こうした研究がしばしば「語りの特権化」(Atkinson 1997)をしているとする批判がある。具体的には、語られたものこそがその個人の「真の」経験を理解するための一段優れたデータとみなされたり、病いに関わる経験が自律的主体としての語り手による意味生成の側面に還元されその行為の社会的文脈が捨象されている、とする指摘である。このような指摘は、質的調査、とくにインタビュー調査に依る研究一般にも一定程度通底するような方法論的課題を提起している。本部会は、各々の登壇者の調査経験の報告を通して、上記のような批判に研究者がいかに応えうるかについて一定の道筋を示すことを目的とする。(参考文献:Atkinson, P., 1997, “Narrative Turn or Blind Alley?” Qualitative Health Research, 7(3): 325–44.)

コーディネータ

  • 志水洋人(大阪大学)
  • 上野彩(大阪大学)

登壇者

  • 志水洋人(大阪大学):本企画の主旨について
  • 上野彩(大阪大学):希少疾患の語りについて
  • 心光世津子(武庫川女子大学):アルコール依存症者の語りについて
  • 髙木美歩(立命館大学):「自閉症者」の手記という語りについて
  • 山中浩司(大阪大学):指定討論者

(研究活動担当理事 石田淳)